知財コンサルの正体をあばけ
この数年、IPランドスケープというワードの浸透などに伴い、知財+コンサル=知財コンサルが知財業界で流行っています。
知財コンサルというワードが入った求人も、5年前に比べて増えた感覚を持っています。
私はコンサルティング会社に所属して知財を専門に仕事をしてきました。
中小企業、金融機関、特許事務所など様々な立場の方と接して仕事する中で、小さなもやもや感を感じていました
もやもや感とは、「知財コンサル」という言葉に対するイメージや期待は、立場によって様々であることです。
今回は、知財コンサルという概念についての自分なりの整理と、整理を踏まえた今後の知財コンサルに求められることを提示します。
知財コンサルとは一体何なのでしょう?
旧来からの弁理士や知財部の仕事であった特許や商標の出願&権利化とは何が違うのでしょうか?
特許分析に経営指標などを組み合わせた分析をすれば、それで知財コンサルと言えるのでしょうか?
目次
- 知財コンサルに関する一つの誤解
- そもそもコンサルとは?
- 経営コンサルとは?
- 知財コンサルとは?
- 知財コンサルに求められること
知財コンサルに関する一つの誤解
知財コンサルは、特許や商標の出願&権利化とは異なる新しいものというイメージが先行しているように思います。
特許事務所や法律事務所が、本業である出願&権利サービスの受注につなげるため、「知財コンサル」と銘打って出願へ誘導している背景があります。
私個人の考えですが、出願ありきのサービス提供は、本質的な知財コンサルとは言えません。
一方、出願&権利サービスも知財コンサルの一種であるとも言えます。
そもそもコンサルとは?
知財コンサルについて考える前に、そもそもコンサルとは何かかから考えたいと思います。
結論として、知財コンサルは、経営コンサルの一種であると言えます。
経営コンサルはもちろんコンサルの一種なので、概念図を示すと以下のようになります。
コンサルティングやコンサルタントの定義はネット上に星の数ほど掲載されています。
いくつかの定義を集約させると、以下のように言えます。
コンサル=「顧客(クライアント)からの相談」を受け、「クライアントの目的を達成するための課題を明らかにした」うえで、「課題を解決するための戦術を考え手伝う」こと
次に、コンサルのターゲットは、個人と企業の2種類に大別されます。
例えば、婚活がうまくいかずに悩む方に服装や話し方、狙うべき相手の属性をアドバイスすることも立派なコンサルの一つです。
経営コンサルとは?
コンサルを定義した上で、次に経営コンサルについて考えます。
ここでは、目的、戦略、戦術の3つに分けて整理を進めていきます。
「目的、戦略、戦術」はセットで捉えるもので、目的→戦略→戦術の順に展開していくイメージです。
「戦略とは、何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと」(引用元:「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」角川書店)
「戦術とは、戦略を実行するための具体的なプラン」(引用元:「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」角川書店)
ここで、経営コンサルの目的は、クライアントを儲けさせることです。
経営コンサルのターゲットは企業のため、この目的は当然ですね。
戦略は、財務状態の改善や新規顧客の開拓などが挙げられます。
戦術は、ホームページのSEO対策や新規事業立ち上げなどが挙げられます。
知財コンサルとは?
ようやく話が戻ってきましたが、知財コンサルについても経営コンサルと同様に、目的、戦略、戦術に分けて整理をします。
上述したように、知財コンサルは経営コンサルの一種のため、知財コンサルの目的も、経営コンサルと同じく「クライアントを儲けさせること」です。
戦略は、経営コンサルで挙がっていた例と同様のものが挙がります。
戦術は、特許や商標の出願&活用が代表的です。
ただし、特許や商標の出願&活用が知財コンサルに該当するためには、目的と戦略を踏まえている必要があります。
特許事務所勤務の弁理士が、なぜ目の前のクライアントがこのアイデアで特許出願をする必要があるのかをヒアリングし、出願取り下げも含めた必要な提言をしていくことは、まさに知財コンサルと言えます。
戦術は、特許や商標の出願&活用が代表的ですが、他にも、ライセンスによる収益化やノウハウ秘匿なども知財を用いた戦術といえます。
ぶっちゃけ、知財の概念は広いので、結構なんでもありですが、その話はまた別の機会にしたいと思います。
知財コンサルに求められること
以上を踏まえ、知財専門家が知財コンサルを考えるにあたって必要なことを3つ挙げます。
① 知財活動がクライアントの経営にどう影響するか常に考え提言すること
クライアントにとっては特許出願1件とっても大きな投資です。
私はよくスタートアップで事業立ち上げの方に相談を受けます。
「特許1件ざっくりいくらかかるかな?」と聞かれ、「1件あたり80~100万円が目安」と答えると尻込みされるケースも多いです。
特許出願を提言する前に、出願する必要が本当にあるのか、出願するならばコア部分に絞るべきではないか、等を検討する必要があるでしょう。
② ”出願よりも優先すべきことがないか”の目線を持つ。
限られた資金と人をどこに投じることが、目的である「クライアントに設けされること」につながるのかを意識することが大切です。
知財はあくまで戦術の一つに過ぎません。
知財以外の戦術がより適当なら、知財にこだわる必要性はありません。
③ 他専門家や金融機関との連携関係の構築
知財専門家にとって、一人で財務や税務、ITといった他分野の専門性を身につけ、クライアントに知財以外の戦術を用いた提言をすることは困難です。
しかし、他の専門家を紹介することで、クライアントにとっての価値を最大化させることが可能になります。
他の専門家とは、例えば、人事や財務の専門家が挙げられます。
知財専門家は知財村に閉じこもりがちです。
自身がハブになる気持ちで、他専門家とのネットワークを構築していくことが、クライアントファーストのサービス提供につながります。
以上